福岡市動物園について

職員による雑誌等への寄稿文

電気と九州2012年11月号 その後のゾウと新しい施設

投稿日 : 2012年11月14日

これまでに2008年12月にゾウの引っ越しに向けての準備、2011年5月に新しいゾウ舎への引っ越しの様子をお伝えしました。
 アジアゾウのおふくとはな子は、2009年9月に古いゾウ舎から新しいゾウ舎(寝室)まで歩いて引っ越しました。私たちの予想より短い2週間という期間で引っ越しできたのですが、2011年2月に完成した新しい運動場には1か月で慣れると予想していたのに、なんと!10か月もかかってしまいました。
 寝室の扉を開けても運動場に出ないし、運動場にでても置いてあるエサを鼻で巻き取りすぐ寝室に戻ってきてしまうのです。寝室の扉を閉めてしまえばいい話なのですが、ゾウ用の扉は幅2.5m高さ4mととても大きく重いので油圧で動かします。扉の閉まるスピードはとてもゆっくりで閉まる前にゾウが戻ってきてしまうのです。この予想外の長期戦に私たち飼育展示係も一時期、途方に暮れてしまいましたが、2011年12月からは扉を開けるとすんなり運動場に出て扉も閉められるようになりました。
 62才で国内3番目に高齢のおばあちゃんゾウのおふくは現在、運動場のほとんどを利用しており、至近距離で見ることができるガラスの近くでエサを食べたり、ゾウの鼻を観察できるノーズチューブを利用したり大活躍です。ゾウ舎の運動場は山の斜面に作ったので上の広場と下の広場では1mの高低差があり、スロープと階段でつながっています。はな子(41才)はこの階段とスロープが苦手のようで、まだ上の広場には行くことができません。おふくは上の広場で過ごすことが多いのですが、まだ完全には慣れていないようで、驚くとすぐ下の広場に戻ってきてしまいます。
 ここ数年はゾウ舎の周りで常に工事が行われていましたが、それもようやく完了し静かな環境が戻ってきました。これからより一層、このゾウ舎がおふくとはな子にとって安心して過ごせる場所になってくれることを願っています。
話は変わりまして…この原稿は10月中旬に書いています。ゾウ舎の隣で建設していたオランウータンなどの新しい獣舎がやっと完成し、現在は10月末の公開に向けて動物たちを新しい獣舎に慣らしているところです。
 ゾウ舎や園路からも見える巨大なジャングルジムが目玉のひとつなのですが、そこで暮らすオランウータンとテナガザルにもぜひ注目していただきたいと思います。高さが15mもあるとても大きな施設なので、公開前でも来園された方には丸見えです。動物園の外からも見えるんですよ。
 獣舎建設のために、一時他の動物園で暮らしていたオランウータンのミミ(オス)とユキ(メス)も帰ってきました。オランウータンは体が大きいので目立ちますが、動きは案外ゆっくりで、あまり動きません。そこで海外では前例のあるテナガザルとの同居を試みることにしました。野生でもオランウータンとテナガザルは同じ森に棲んでいます。テナガザルは大変身軽で、南公園に飛んで行ってしまうのではないかととても心配していましたが、今のところは大丈夫です(笑)。ひょいひょいとロープを渡っていると、見ていた来園者から拍手が起こることもあります。あまり動かないオランウータンと動き回るテナガザル。たまに一緒に過ごしたり…その様子は見ていて飽きませんが、地面で草を食べたり、お昼寝することもあり動かないこともあります。そんなときはベンチでのんびり待ってみるのもいいと思います。
 今回、ほかの動物たちも同時に公開します。2階建てになっている「アジア熱帯の森」では、新しく仲間入りしたコツメカワウソやビントロング(どんな動物かわからない人は実際に見に来てくださいね)を間近で観察することができます。どの獣舎も飼育展示係が「動物も来園者も楽しめる施設」を目指しアイデアを出しました。私たちも毎日少しずつ新しい獣舎に慣れていく動物を楽しみ、感動しているところです。公開する頃には動物たちも慣れてダイナミックな動きを披露してくれると思います。ちなみに暖かい地域に住んでいる動物たちなので、屋外の運動場にも暖房を設置しましたので寒い時期にもご覧いただけます。
 また、来年の秋にはヒョウ舎とマレーグマ舎が公開予定で、これから建設していきますのでそちらもお楽しみに!

                       飼育展示係 伊藤 姿子
福岡市動物園公式ブログ

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