福岡市動物園について

職員による雑誌等への寄稿文

動物園コラム チンパンジーと私たち

投稿日 : 2009年3月02日

皆さんは風邪などひかれていませんか?
チンパンジー達は人間に効果があるとされているネギを毎日食べて元気に暮らしています。DNAレベルでは人間と98.7%同じと言われているチンパンジーについて、今回はあまり知られていないことなどお話しようと思います。
チンパンジーと聞くとテレビに出ているおとなしくて可愛い動物というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか?実はこれは大きな間違いで、大人のオスになると身長150cm、体重50kg、握力はなんと300kgオーバーというとんでもない力の持ち主になります。
また群れの信頼関係を大事にするので、「飼育体験」などの時に知らない人間が寝室の前を通ると唾をかけたり大声を出しながらオリを蹴ったりと騒々しい一面もあります。飼育員も初めて担当になった時はこの洗礼を受けることになります。
チンパンジーとの信頼関係を築くには最低でも3年かかります。私は今では彼らと握手をしたり顔を触らせたり出来るようになりましたが、信頼を築くまでには引っ掻かれたり指を噛まれたりしました。
また動物園などで普通に見ることができるチンパンジーですが、実は『絶滅危惧種』であることもあまり知られていません。現状のままでは20年後には野生のチンパンジーは絶滅しているかもしれません。
チンパンジーの数が減っている主な原因は、彼らが住む森が減少していることです。木材会社などが違法に木を伐採してそれを売る、しかもその木は日本にも輸出されているかもしれないということです。チンパンジーに限らずほとんどの動物がそうですが、絶滅の原因を作っているのは私たち人間にあると言っても過言ではありません。
動物園はこういった動物たちを絶滅から救う「種の保存」という大きな役割も担っていますが、動物園だけの力では限界があります。そこでこの「種の保存」にぜひ皆さんにも協力をお願いします。
と言ってもあまり難しく考えずに、ただ日々の生活の中でちょっとした「ムダ」を無くすことを心掛けてもらえれば種の保存に貢献できます。例えばゴミや電気使用量を減らすことで地球温暖化を防ぐことが出来ます。動物の絶滅の原因になっている製品を買わないということも有効な手段でしょう。一人一人の力は小さくても、その力を合わせることで大きな力になります。そしてその力は地球の環境を守ることになり、この地球上の全ての動物が暮らす環境を守ることにも繋がり、その結果動物たちの絶滅を防ぐことにも繋がっていきます。
私は今後「環境保護」は人類の使命になってくるのではないかと考えています。
いつかは『絶滅危惧種』という言葉がなくなる日が来ることを願いながら日々チンパンジー達と暮らしていきたいと思います。
写真 左上 白ネギを食べるチンパンジー(サクラ)
写真 右中 チンパンジータワー
チンパンジーのストレス軽減のために建てられた,高さ14メートルのタワー。上の方に写っているのが筆者です。
写真 左下 チンパンジータワーからの眺め
タワーから見ると,人間はこんなに小さく見えます。


飼育展示係 菅
福岡市動物園公式ブログ

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