福岡市動物園について

職員による雑誌等への寄稿文

動物園コラム 動物園獣医師として

投稿日 : 2009年1月18日

「プル,プル,プル」朝,園内専用の携帯電話のベルが鳴りました。「クロヒョウが朝獣舎から出てきません。」と,担当飼育員からの電話でした。

1週間ほど前から足を引きずるようになり,2日前に血液検査しても特に異常が認められなかったのですが,年齢が20歳(人間でいえばすでに90歳になろうかとの年齢です。)と高齢で心配していたところでした。

直ちに入院させ治療することにしました。とは言っても野生動物ですのでおとなしく血管注射ができるわけでもありません。特殊な檻に入れて必要な水分,栄養剤などを毎日投与することとしました。
しかし,治療の効果もなく入院して13日目に担当飼育員に最後のあいさつ(と思われるように飼育員の声に反応し頭を上げました)をしたあと息を引き取りました。


私は,昨年4月に動物園に異動し,いろいろ勉強しながらやってきましたが,臨床に携わるかぎり動物の生死に直接かかわらなければならないという現実を改めて思い知らされました。

市役所に入庁し25年目にしてようやく念願の動物園に来ることができたのですが,市役所に入庁する前は4年間乳牛の診療に従事しており,基礎的な知識は持っていたつもりですが,動物臨床からかなり遠ざかっており,また,他の市役所の職場とは全く異なる業務内容で,正直浦島太郎状態でした。

昔の知識を思い出しつつ,現在の進んだ診療知識・技術を習得しようと日々努力しているのですが,動物の死に直面する度に自分の力のなさに愕然とする毎日です。それでも,老体にむち打って頑張っているところです。そうしなければ,園内に飼育されている140種600点余りの動物や年間600から700頭羽持ち込まれる傷ついた野生動物の命とは真摯に向き合えません。
ところで,みなさんは,動物園内のどこに「動物医療センター」があるのかご存じですか?

動物園正面からゾウ舎横の坂を上って、植物園へ行く坂のちょうど反対側の丘の上にあります。

それで,ひとたび動物に異常があった場合は,山の上から獣舎まで坂を上ったり下ったりしながら行かなければなりません。診療器具がたくさん必要な場合はゴルフ場によくあるカートで移動しますが,入園者の方も多くいらっしゃいますので,みなさんの邪魔にならないようにできるだけ自分の足で動くようにしています。これは別の目的もあるのですが(メタボ解消のためのささやかな涙ぐましい努力ですが)・・・。



これからも,動物が元気な姿で入園者のみな様に会えるよう,また,元気に野生に帰っていけるよう頑張ってまいります。動物園においでの際は,このような縁の下の力持ちがいることにちょっぴり思いを馳せていただければ幸いです。

動物衛生係長 大神
福岡市動物園公式ブログ

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