福岡市動物園について

職員による雑誌等への寄稿文

電気と九州2008年2月号 カバのカンナの思い出

投稿日 : 2008年5月29日

 カバと言えば、誰でもすぐに大きな赤味を帯びた体、太くずんぐりとした短い足、顔の半分もありそうな大きな口など、どう見ても美しいと言えない顔や姿を思い出すでしょう。けれども、毎日顔をあわせていると、あれでなかなか可愛い動物なんです。
 
 メスのカンナは性格も穏やかで、昭和37年当園で生まれて以来、夏のサマースクールやバックヤードツアー等、子ども達にさわってもらうなど来園者の人気者でした。
でも、残念な事に去年の12月亡くなってしまいました。

 
カンナの思い出と言えば、平成8年生まれのタロウとの二回目の結婚から始まります。カンナが高齢なので妊娠はしないものと思っていたら、あんなに仲の良かったタロウに急に冷たくなり、攻撃しだしました。メスのカバは子どもが出来ると、オスを受け付けなくなります。もうこれは新しい生命が芽生えたかな、と思っていたら、交尾から5ヶ月を過ぎたころからだんだん腹部が大きくなってくるし、大きく赤味を帯びてくる乳房。もう、これは妊娠していると確信しました。

 そして平成12年12月26日、朝いつものように獣舎に行くとカンナがプールの中で何回も反転していました。いよいよ二世の誕生です。まるまるとした体、クリクリとした可愛い眼。カバは水中で出産し、水中で哺乳します。その子どもは生まれた時から潜水泳法の名手です。私は、カバの出産に立ち会えた事に感激し、うれしくて涙が出そうでした。
 
 生まれ落ちれば次は哺乳です。これは問題もなく授乳できましたが、子どもが陸上では後ろ足が立てなくて、10日間ぐらいはカンナが口先で子どもの後ろ足を刺激していたのを覚えています。こうして生まれたのが後に中国・広州の動物園に行ったカンタです。
 
 そののち、私もカバの担当からはずれましたが、機会があればカンナのようなカバをもう一度飼育してみたいと思います。

(福岡市動物園 飼育展示係 川口 澄雄)
福岡市動物園公式ブログ

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