職員による雑誌等への寄稿文
電気と九州2012年5月号 バクってこんな動物です
投稿日 : 2012年5月13日
バク舎で作業をしていると、「見て、アリクイがいるよ」、「あ、パグだ」、といったお客さんの会話をよく耳にします。白黒の体色と長い鼻は似ていますが、アリクイとバクは全く違う動物です。パグにいたっては犬種です。残念ながら、ゾウやライオンといった動物たちと比べ、バクはあまり認知されていません。皆さんも「バク」と聞いても、夢を食べる動物ということくらいしか思いつかない方が大半だと思います。そこで、今回はみなさんにバクについて少し詳しくなっていただこうと思います。
バクの仲間は現在、中南米に3種(ブラジルバク、ベアードバク、ヤマバク)、東南アジアに1種(マレーバク)生息しており、当園では2頭(オス1頭、メス1頭)のマレーバクを飼育しています。中南米とアジアという遠く海で隔てられた2大陸に生息しているバクですが、大昔はユーラシア大陸とアメリカ大陸の間を歩いて移動ができ、それぞれの地域で別々に進化していった可能性があります。
マレーバクは背中からお腹にかけて白く、それ以外が黒いという特徴的な体色をしていますが、それはお釈迦様がバクの背中に乗った跡が白くなったためだと言われています。もちろんこれはおとぎ話で、マレーバクの生息する薄暗いジャングルでは、あの特徴的な体色も保護色になるようです。
また、広く知られているバクが夢を食べるという話も本当ではありません。夢を食べるとされているのは、中国の想像上の生き物の獏(バク)であり、いつしか獏とバクが混同され、実在するバクが夢を食べると思われるようになりました。このように、バクはとても神秘的な側面も持ち合わせています。
ところで、当園で飼育しているバクはというと、とてもおとなしくのんびりとした性格をしています。日中は無防備に横になって寝ていることが多く、デッキブラシで体をこすってやると恍惚の表情を浮かべます。このような光景はお客さんだけでなく、飼育員にとっても大きな癒しになっています。
一方で、こののんびりした性格が災いすることもあります。暖かい地域に生息するマレーバクは寒さが苦手で、冬になると暖房の利いた寝室から中々出ようとしません。シマウマなどの一般的な草食動物は、飼育下であっても人間に対して警戒心があるので、寝室に人が入ってくると外に逃げ出しますが、当園のマレーバクは人間に対する警戒心が全くといっていいほどなく、寝室に人が入ってきても無関心なため、時間をかけて自ら出て行ってもらうしかないのです。
また、たとえ一頭が出てくれたとしても油断はできません。オスが先に外に出たとしても、メスが部屋から出ないでのんびりしている隙にオスがメスの部屋に乱入してきます。それならばと、翌日はメスから先に外に出すと今度はオスが中々外に出ず、メスがオスの部屋に入ってきます。まるで、夜中に二頭で飼育員を困らせようと相談をしているのではないかと思うほどで、夏場はほんの2~3分で終わる出舎作業が、冬になると10分以上もかかるため、毎日頭を悩ませることになります。
しかし、暖かくなる春から夏になるにつれて、放飼場にあるプールを目当てにバク達はすんなりと外に出てくれるようになります。特に、メスはプールが大好きで、前足でばしゃばしゃと水をかいたり、水の中に潜ったりして、とても気持ちよさそうにしています。冬場には飼育員にとって手のかかる存在だったバクも、また癒しの存在に戻ります。
みなさんも学校や仕事で疲れた時は、動物園でバクを眺めながら癒されてみてはいかがでしょうか?
飼育展示係 舞田 桂悟
バクの仲間は現在、中南米に3種(ブラジルバク、ベアードバク、ヤマバク)、東南アジアに1種(マレーバク)生息しており、当園では2頭(オス1頭、メス1頭)のマレーバクを飼育しています。中南米とアジアという遠く海で隔てられた2大陸に生息しているバクですが、大昔はユーラシア大陸とアメリカ大陸の間を歩いて移動ができ、それぞれの地域で別々に進化していった可能性があります。
マレーバクは背中からお腹にかけて白く、それ以外が黒いという特徴的な体色をしていますが、それはお釈迦様がバクの背中に乗った跡が白くなったためだと言われています。もちろんこれはおとぎ話で、マレーバクの生息する薄暗いジャングルでは、あの特徴的な体色も保護色になるようです。
また、広く知られているバクが夢を食べるという話も本当ではありません。夢を食べるとされているのは、中国の想像上の生き物の獏(バク)であり、いつしか獏とバクが混同され、実在するバクが夢を食べると思われるようになりました。このように、バクはとても神秘的な側面も持ち合わせています。
ところで、当園で飼育しているバクはというと、とてもおとなしくのんびりとした性格をしています。日中は無防備に横になって寝ていることが多く、デッキブラシで体をこすってやると恍惚の表情を浮かべます。このような光景はお客さんだけでなく、飼育員にとっても大きな癒しになっています。
一方で、こののんびりした性格が災いすることもあります。暖かい地域に生息するマレーバクは寒さが苦手で、冬になると暖房の利いた寝室から中々出ようとしません。シマウマなどの一般的な草食動物は、飼育下であっても人間に対して警戒心があるので、寝室に人が入ってくると外に逃げ出しますが、当園のマレーバクは人間に対する警戒心が全くといっていいほどなく、寝室に人が入ってきても無関心なため、時間をかけて自ら出て行ってもらうしかないのです。
また、たとえ一頭が出てくれたとしても油断はできません。オスが先に外に出たとしても、メスが部屋から出ないでのんびりしている隙にオスがメスの部屋に乱入してきます。それならばと、翌日はメスから先に外に出すと今度はオスが中々外に出ず、メスがオスの部屋に入ってきます。まるで、夜中に二頭で飼育員を困らせようと相談をしているのではないかと思うほどで、夏場はほんの2~3分で終わる出舎作業が、冬になると10分以上もかかるため、毎日頭を悩ませることになります。
しかし、暖かくなる春から夏になるにつれて、放飼場にあるプールを目当てにバク達はすんなりと外に出てくれるようになります。特に、メスはプールが大好きで、前足でばしゃばしゃと水をかいたり、水の中に潜ったりして、とても気持ちよさそうにしています。冬場には飼育員にとって手のかかる存在だったバクも、また癒しの存在に戻ります。
みなさんも学校や仕事で疲れた時は、動物園でバクを眺めながら癒されてみてはいかがでしょうか?
飼育展示係 舞田 桂悟